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東京地方裁判所 昭和59年(ワ)2731号・昭59年(ワ)2733号 判決

一 実用新案権侵害行為に対する損害賠償請求について

1 請求の原因1の事実は、原告と被告らとの間に争いがない。

2 同2の事実は、原告と被告らとの間に争いがなく、右争いのない事実に成立に争いのない甲第二号証(本件請求公告公報)を総合すれば、本件考案は、次の構成要件からなるものであることが認められる。

A 前面フランジが窓なし透明となされ、内部に捲回されたテープを見透かすことができること。

B 後面フランジがテープ内容に応じてそれぞれ異色の窓なし着色不透明となされ、テープの捲込、捲ほぐれに応じて後面フランジの見透かせる着色識別コード面積部分が変化することにより、捲回されたテープ量を判別できること。

C 後面フランジがそれぞれ異色に着色コード化されていることにより、テープ内容を分類可能としたこと。

D 磁気テープ等用リールであること。

3 被告旭化成が被告製品(一)の(1)及び(2)を販売したことは、原告と被告旭化成との間に争いがない(ただし、別紙目録(一)の(1)、(2)の記載中、「前面フランジ3は、つや消し加工(俗にいうナシジ加工)をした透明なプラスチツク材質であつて」との部分について、被告旭化成は、「前面フランジ3は、透明なプラスチツク材質につや消し加工(俗にいうナシジ加工)をしたものであつて」という趣旨であるとの前提で認める旨主張するところであつて、この点の表現の仕方については右当事者間に争いがある。)が、被告旭化成が被告製品(一)の(1)及び(2)を組にして販売したことを認めるに足りる証拠はない。また、被告旭化成が被告製品(一)の(1)及び(2)を製造したことを認めるに足りる証拠もない。原告は、被告旭化成が、被告製品(一)の(1)の販売数量は被告製品(一)の(2)の販売数量の一パーセント前後にすぎない旨主張したことから、被告旭化成は、少なくとも右一パーセントの数量の被告製品(一)の(2)及びこれと同数量の被告製品(一)の(1)については、両者を組にして製造販売したことを認めている旨主張するが、本件記録によれば、被告旭化成の右主張は、単に被告製品(一)の(1)及び(2)の販売数量を比較して述べたものにすぎず、被告製品(一)の(1)及び(2)を組にして販売したことを認める主張ではないことが明らかであるから、原告の右主張は、採用しえない。

被告住友が被告製品(二)を販売したことは、原告と被告住友との間に争いがない(ただし、別紙目録(二)の(1)、(2)の記載中、「前面フランジ3は、つや消し加工(俗にいうナシジ加工)をした透明なプラスチツク材質であつて」との部分について、被告住友は、「前面フランジ3は、透明なプラスチツク材質につや消し加工(俗にいうナシジ加工)をしたものであつて」という趣旨であるとの前提で認める旨主張するところであつて、この点の表現の仕方については右当事者間に争いがある。)が、被告住友が被告製品(二)の(1)及び(2)を組にして販売したことを認めるに足りる証拠はない。原告は、被告住友が、被告製品(二)の(1)の販売数量は被告製品(二)の(2)の販売数量の一パーセント未満にすぎない旨主張したことから、被告住友は、少なくとも右一パーセント未満の数量の被告製品(二)の(2)及びこれと同数量の被告製品(二)の(1)については、両者を組にして販売したことを認めている旨主張するが、本件記録によれば、被告住友の右主張は、被告旭化成の前記主張と同様に、単に被告製品(二)の(1)及び(2)の販売数量を比較して述べたものにすぎず、被告製品(二)の(1)及び(2)を組にして販売したことを認める主張ではないことが明らかであるから、原告の右主張もまた、採用しえない。

被告メモレツクスが被告製品(三)の(1)を輸入販売したことは原告と被告メモレツクスとの間に争いがないが、被告製品(三)の(1)及び(2)を組にして輸入販売したことを認めるに足りる証拠はない。

以上によれば、被告らが被告製品(一)ないし(三)の各(1)及び(2)を組にして販売等したとの事実を認めることはできないのであるから、右の事実を前提とする原告の請求は、その前提を欠き、理由がない。

4 原告は、仮に、被告旭化成が被告製品(一)の(1)及び(2)を、被告住友が被告製品(二)の(1)及び(2)を、被告メモレツクスが被告製品(三)の(1)及び(2)を、組にして販売等したものではなく、それぞれ単独で販売等したものであるとしても、被告らの右行為は、本件実用新案権を侵害するものである旨主張するので、審案するに、(1)前掲甲第二号証によれば、本件考案は、磁気テープ等用リールに関するものであるが、従来のリールではフランジが両面ともに透明であつたり、両面ともにアルミ板若しくは不透明リールでこれに窓を設けたものであつたり、又は単一色のリールのみであつて、電子計算機データ資料として色分けにより分類して保管することができないという欠点があつたところ、本件考案は、右欠点の解消を目的として、前2認定の構成要件のとおりの構成を採用したものであつて、右構成によると、前面フランジを窓なしで、かつ、透明としたことにより、内部に捲回されたテープ内容を見透かすことができ、また、後面フランジを窓なしで、かつ、テープ内容に応じてそれぞれ異色の着色不透明としたことにより、テープの捲込、捲ほぐれに応じて後面フランジの見透かせる着色識別コード面積が変化することにより捲回されたテープ量を判別できるとともに、後面フランジがそれぞれ異色に着色コード化されていることにより、テープ内容を分類可能としたものであること、及び、本件明細書には、本件考案の奏する作用効果として、「前面フランジ3が透明であるので、捲回されたテープを見透すことが出来、テープの捲回量に応じて見透せる後面フランジの着色面積部分が変化するので極めて明瞭に捲回されたテープ量の増減の変化を確認することが出来る。各フランジには窓がないのでテープ面へのゴミの進入を防止出来、ドロツプアウトの原因を排除するものである。更に後面フランジ2にそれぞれ異なる色の不透明着色を施してあるので、別にリールのハブの部分に色識別リングを装着する必要がなく構造簡単にして用意に色分け分類が可能であり」との記載がある(本件請求公告公報二頁右欄三行ないし一四行)ことが認められ、また、(2)成立に争いのない乙第二、第三号証によれば、本件考案の実用新案登録出願人である原告は、昭和五〇年一月一四日、本件考案の実用新案登録出願について、引用の公知例に基づききわめて容易に考案をすることができる旨の拒絶理由通知を受け、これに対して本件意見書を提出し、その中で、引用された公知例においては、「背面フランジの着色を複数色として、これを前面フランジより見透して、これにより色コード識別を行う技術思想は全く認められない」(本件意見書四頁一一行ないし一四行)、本件考案は、「前面フランジが透明で後面フランジが着色不透明とされ、これにより後面フランジの種々の色別により色コードの識別が可能で」(本件意見書五頁三行ないし六行)あると述べていることが認められる。以上(1)、(2)の認定事実によれば、本件考案は、まさに、「後面フランジがテープ内容に応じてそれぞれ異色の窓なし着色不透明となされ」(構成要件B)、「後面フランジがそれぞれ異色に着色コード化されていることにより、テープ内容を分類可能としたものであること」(構成要件C)、すなわち、テープの内容を後面フランジの色により分類することができるように、リールの後面フランジをそれぞれ異色に着色した複数のリールを組み合わせることを必要不可欠の要件とするものであり、したがつて、本件考案の実施とは、後面フランジをそれぞれ異色に着色した複数のリールを組み合わせたものを製造し使用し譲渡し貸し渡し、譲渡若しくは貸渡のために展示し又は輸入する行為をいうのであつて、単数の色に着色された後面フランジしか有しないリールを単独で販売等することは、本件考案の実施には当たらず、本件実用新案権を侵害するものということはできない。そうすると、被告らが被告製品(一)ないし(三)の各(1)、(2)をそれぞれ単独で販売等した行為を本件実用新案権侵害であるとする原告の主張は、採用しえず、したがつて、右主張に基づく原告の請求は、その余の点について判断するまでもなく、理由がない。なお、原告は、右の点についてるる主張するが、右認定判断に照らせば、原告の右主張は、独自の見解であつて、採用するに由ないものといわざるをえない。

二 実用新案権侵害行為の幇助行為に対する損害賠償請求について

原告は、被告製品(一)ないし(三)を複数種類購入して、テープ内容に応じてそれぞれ異色の後面フランジのリールを組み合わせて使用し、これにより後面フランジをそれぞれ異色に着色コード化し業として被告製品を使用する者が存在することを前提として、被告らに対し、損害賠償請求をするものであるが、右のような使用者が存在することを認めるに足りる証拠はなく、また、被告らが、右のような使用者が存在することを未必的にでも知りながら、又は過失によりこれを知らないで、被告製品を販売等したことを認めるに足りる証拠もない。そうすると、原告の本件実用新案権侵害行為の幇助行為に対する損害賠償請求は、その余の点について判断するまでもなく、理由がない。

三 以上のとおりであるから、原告の請求をすべて棄却することとする。

〔編註〕本件における実用新案権は左のとおりである。

登録番号  第一一六五三六三号

考案の名称 磁気テープ等用リール

出願    昭和四一年三月二二日

出願公告  昭和五〇年一〇月八日

登録    昭和五二年三月三一日

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